約 19,973 件
https://w.atwiki.jp/jujin/pages/941.html
ミナさんは佳望学園に行ってますよぉ
https://w.atwiki.jp/jujin/pages/993.html
オオカミと少女 #1 310 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/03/14(日) 00 56 52 ID MGwQ1KG5 ≫302,303
https://w.atwiki.jp/jujin/pages/74.html
共に歩く道 413 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/29(月) 21 16 37 ID Wa6BESpS いのりん。
https://w.atwiki.jp/jujin/pages/997.html
リオとミサコとお姉さま 「ミサミサ、頼みがある……。わたしを救うために聞いてくれ」 「はい!因幡先輩のためなら、番場道産子(バンバ・ミサコ)は身を粉にする覚悟です!」 きょうもまた一日の疲れを癒そうと地上の寝床へ太陽が傾き始めた頃、ウサギとウマの少女のシルエットが紅の空に浮かび上がっていた。 佳望学園の中庭にて、ウサギの風紀委員長・因幡リオは寒風に長い耳を揺らしながら、汚れの無い後輩に相談を申し立てた。 風紀委員の後輩であるウマの番場道産子、通称「ミサミサ」は、敬愛なる先輩から呼び止められると脚をそろえて背筋を伸ばし、 濁り無くも清々しくもある声で明朗活発に先輩へ返事する。肩から掛けた武道用具を入れたバッグは、彼女を凛々しく見せる立役者。 褐色の肌のミサコは風紀委員として学園の乱れを正すと共に、なぎなた部の副部長として活躍する文武両道を地で行く少女。 2m近い身の丈は、他の生徒を圧倒する存在感を示し、高等部女子たちの憧れの存在でもあった。漆黒の長い髪が実に誇らしい。 相反して、背丈もそれほどでもなく、どちらかと言えば地味な子のリオは、いちおう『委員長』として小さな胸を張ってきた。 ミサコの武道仕込みの姿勢の正しさは、寸分のゆがみを許さない風紀委員としての誇りでもあり、先輩への尊敬のかたちであった。 風はミサコの滝のように流れる尻尾をいたずらにくすぐり、リオのスカートをふわりと揺らす。 「頼む……」 リオは普段、学園では『真面目のまー子』で通っている。 制服もキチンと着こなし、靴もきれいに磨き、スカートもほどほどの丈で止め、生徒たちの風紀を守ってきたつもりだった。 ミサコももちろん、そんなリオを目標に彼女を支えてきた。武道で鍛え上げられた心身は、ミサコを裏切ることは無い、はずだ。 「因幡先輩、わたしでよろしければ力になります」 「そう…ね」 光の影になったリオの横顔が、少女を美しく見せる。それは、何故か。光のまやかしなのか。 深く沈黙を溜めたリオは、そろえたばかりの髪の毛を揺らしてミサコの真正面に言葉を叩いた。 「わたしの先輩に会ってくれないかっ」 「因幡先輩の先輩ですか?!」 理由はリオにしか分からないが、何故かリオの両手はぐっと握り締められていた。 何かを隠しているかのように俯いたリオは、実の姉のようにミサコへと優しく言葉をかける。 「そう、わたしの憧れだった人。成績は優秀、『学園の白百合』とも謳われた風紀委員長・石見月子先輩。 わたしが風紀委員に参加することを決意させた、恩人でもあるの。わたしと同じウサギの石見先輩は、わたしの目標だった。 運命的な出会いを通じて、わたしは5つ上の石見先輩に追いつこうと必死に生徒たちに、正しい風紀を啓蒙してきたの。 そして、石見先輩はこの学園を卒業し、伝説から神話にへとかわったのね……。 だけど……かなわない人物は、誰にだっていることをわたしは忘れていたのね……。そんな先輩の頼みを叶えなければ、ね」 「わかりました。この番場、委員会活動の名にかけて!」 夕日を反射するリオのメガネの底は、ミサコには見えなかった。 詳しいことは、後日伝えるとリオはミサコに先輩との邂逅の約束をして、この日は学園から帰宅することに。 「そうだ。因幡先輩、わたしはちょっと部室に」と、ミサコは言葉を残すと、重い武道用具のバッグを軽々と肩にかけて走り去った。 ―――「ちょ、ちょ!月子先輩ってば、こんなところで才能の無駄遣いしないでよ!麦茶噴いたー!」 その晩、因幡家の一室では奇妙なやりとりがPCを通じて行われていた。 実際にはキーボードやモニタには、麦茶なんぞかかっていない。それでも、彼女は「麦茶、麦茶」と呪文のように呟く。 ウサギの少女は、PCに映し出される2、3行の文を読んでは、怒ったり、笑ったり、リンク先の落書きに腹筋崩壊したり、そして一人で悶えていた。 感情のエネルギーは、少女の指先の動きに蓄えられた後に、同じくモニタ上の文字羅列に反映される。 「ふう、全く……。だから先輩の関わる作品は、ニ○厨からいじりコンニャクにされるんだよ。草生やしてやる!!」 だらしなく足を伸ばして、髪の良く言って無造作ヘア。大人し目なセーター姿のリオは、マウスを操作してウィンドウを動かす。 ニ○動から拾った、名作MADを鑑賞しようとFLVプレイヤーを立ち上げると同時に、フォローしていた相手から返事が来る。 ウサギ向けのヘッドフォンをモニタに繋げながると、メガネに短い文章が反射する。 『@megane_usagi 日曜日なら、もしかしてわたしは大丈夫だ!ミサコたんによろしくな!! あと、わたしが原画を描いた作品がニ○動でいじりコンニャクにされていて、玄米茶噴いた』 画面を睨みつけながら、リオは返事を打つ。音楽をヘッドフォンから漏れる。そして、麦茶をごくりと口に含んだ。 その頃、ミサコは自宅一階にある、教室のように広い和室で静かに抹茶を嗜んでいた。 ―――「申し訳ございません!その日はなぎなた部の朝錬がありまして!」 リオがミサコとの約束の日を伝えると、顔を曇らせたウマの少女がいなないた。 天を突くほどの背のお辞儀は、間近から見ると驚くほど迫力がある。そんな呑気なことを言っている場合ではない。 委員会が始まると言うのに、後輩を気落ちさせてしまうのは、先輩としてかたじけない。これでは話し合いが進まなくなってしまう。 廊下で真剣に頭を下げられても、どうしたものかと勘違いされまいかと、リオは冷や汗をかくことしかできなかったのだ。 何とかこの場を乗り切ろうと、胸に資料を抱いているリオは「とにかく、教室に入ろう、ね!」と猫なで声でミサコをなだめた。 「石見先輩だって忙しいんだって。でも、武道少女の姿を見たら、石見先輩だって喜ぶよ。『こんな頼もしい子が、風紀委員を支えているんだ』って」 「さようですか……」 「それに、その日一日なら石見先輩も大丈夫だって言ってたし。わたしの目を信じて!」 一瞬、リオはミサコの瞳に吸い込まれそうになった。どうして、わたしはミサコの瞳と違っているのだろう、と。 ミサコの澄んだ瞳は、リオの仕舞い込んだ隠し物を見透かそうとしている、と、リオは目を背けた。 「さ!委員会、始めるよ。きょうは『尻尾美化強化週間』の詰めだから、張り切っていくよ!小田くん!学年アンケートのCD-R!」 きれいに整えられたリオの尻尾をミサコは、優しい瞳でじっと見つめていた。 ―――約束の日が来た。 「朝10時に正門前」と昨日の昼、石見月子からメールを受けて、リオは制服姿でのんびりした日曜日の街を歩く。 当たり前だが人通りが少ない。お日さまが間違って夜中に昇ってしまったのではないかという、無理な錯覚にリオは陥る。 いつもとは違う空気にも慣れないが、学園はいつものように丘の上に建っていた。 リオが一人で学園へと続く坂道を登っている頃、ミサコは学園の武道場でなぎなた部のかかり稽古をしていた。 相手は同級生のネコの女子・紫(ゆかり)。お互い、独特な袴から尻尾を伸ばし、相手に悟られないように無の境地に立つ。 体格に恵まれたミサコの持つなぎなたは、他の生徒のものよりも短く見えるが、これでもゆうに2メートルはある。 さらに、ミサコが振るなぎなたから受けたすねは、防具を通じても骨にしびれが届き、紫の動きを鈍らせる。 ミサコが床と垂直になぎなたを素早く振り上げると、怯んだ紫は一歩すり足で退く。相手が二歩目を出す前に、 自分のすねが痺れていることに気付いた。何故なら、ミサコのなぎなたの先は、床すれすれかすめて振り落とされた後だったからだ。 「これまでー!かかり稽古やめー!!」 主将の号令で、一同はかかり稽古を止めて、それぞれ防具を外していた。ミサコが面の紐を緩めると、冬の空気に 暖かい吐く息が上昇する。下世話なお話だが、ウマ専用の面は、他のものよりも特殊で、お値段もちょっとお高い。 「ミサコのすねは、ホント激痛だよー」 「……稽古とは言え、わたしはいつでも真剣勝負。手加減はしない主義なのでね」 ミサコの相手をするときは、相当の覚悟が要る。は、なぎなた部員の合言葉だ。ミサコと相手をしていた紫は、 音を立てずに相手に近寄る戦法を得意としていたのだが、ミサコの力にはどうしてもねじ伏せられてしまうのだった。 悔しさ反面、ミサコとなぎなたを合わせることが出来て、紫はちょっと嬉しかった。 休日の早朝から続いていた朝錬を終えると、彼女らは元の女子高生へと変身する。ミサコも言うまでも無い。 厳つい防具を部室の棚に仕舞いながら、お年頃にお似合いな甘いクレープの話で花咲かせる。 「ミサコも帰りに寄って行こうよ!佳望新聞に割引券が付いてたっけ」 「申し訳ない。この後わたしは、因幡先輩と約束があって……」 「そうなんだ。ミサコって、ここと風紀委員の掛け持ちだもんね」 「うん。ここでは、心身ともに鍛えられるし、委員の仕事もやりがいもあるし、因幡先輩も頼りになるし」 一足早く制服に着替えたミサコは、持参している武道用具のバッグを肩にかけて、扉の方へ踵を返すと、 漆黒の自慢の髪がふわりと宙を舞う。見とれて手を止めていた部員たちは、ミサコにまた明日と、挨拶をしていた。 ぱたん、と扉が閉まると一瞬水を張ったばかりのプールのように静まり、その後、子どもたちが飛び込むようにざわつき始める。 「ミサコったら!もう、カッコいいよねえ!!」 「こんな子に尊敬されてる因幡さんに嫉妬しちゃうぞ!」 袴からスカートに履き替えた少女たちは、百合の花の香りがした。 ―――「きゃあああ!わたしの、わたしの嫁がぁぁ!!これはもう『公式は病気シリーズ』決定だね!」 学園中庭のベンチにて、PSPを両手でくいるように画面の2次元な幼女にのめり込むウサギがいた。 長い耳から伸びたコードにつながれたPSPは、彼女が拾った動画で蓄積されていたのだ。 「むっはー!これで勝つる!百合ゆりしろー!!なにこれ、かわいい」 じたばたと脚をばたつかせ、ぶんぶんと髪の毛を振りかざすリオは、正直言って休みの学園にはいらない子だ。 静かな空に、リオの奇声が響く。PSPで再生されていた動画は、エンディングを迎え、クレジットが流れる。 「あー出た出た!!『原画/スタジオ・サラブレッド 石見月子・天馬……』キタコレ!!原画マンかあ!」 アニメ制作で始めに元になる絵を描く『原画』。アニメーターは、まずここから第一歩を歩き始めると言う。 リオの携帯電話は空気が読めるのか、ちょうどPSPから『石見月子』の名前が消えた頃、携帯の液晶に『石見月子』の名前が浮かび上がった。 携帯電話の誘いを断ることの出来ないリオは、PSPを傍らに置いて通話ボタンに指をかけると、そのままのテンションで堰を切る。 「はいよ!『真面目のまー子』の因幡ですっ。月子先輩!これ以上、神作品創って、わたしたちをどうする気なんですの! 月子先輩の仕事は、全国のお子たちからお兄さまお姉さままで見てるんですよ。全国民が注目する仕事って何なの?」 「ご挨拶だね、リオ。実は……」 リオにとって、非常に耐えがたき知らせを月子先輩は、これから伝えなくてはならなかった。 その知らせを聞いたリオは、すっくと立ち上がりローファーで地面をたん!と鳴らした。 「この時間をどうしてくれるんです!時給にして何円何銭何厘なんですか!わたしの日曜朝のお楽しみをぐっと堪えて、 録画予約をして、弟に『予約を消してやろっか?』って、バカにされながらここに来たわたしは、いらない子なんですか!」 「だって、作監(作画監督)がね、きのう一日かかって描いた幼女を見てね『お前は専門学校に入り直せ』って言ってボツにしたんだから! ちくしょう、わたしの毛並みが鉛筆で真っ黒だよ!だから、きょうはリテイク。サーセン!多分、次回は止め絵が増えると思うけどね」 「働け!悔しかったら、今度大人の財政力で豪華ランチを奢って下さいよ!支払いは任せろー!バリバリ!やめて!」 「原画マンは、出来高制って知ってて言いやがるな」 とにかく、きょうは月子先輩、佳望学園に現れない……と、月子先輩は言った。 ミサコとの約束を果たせなかったリオは、気を落として少し弱気になった。さっきまでの喧騒はどこへやら。 「月子先輩も、デッサンしたかったんですよね」 「うん……。ウチのプロダクション、ひ弱なウサギとかネコとかばっかだから、生のウマの子がじっくり見たくてね」 「でも、『スタジオ・サラブレッド』って、スタッフの9割がウマの……」 「あそこは、辞めた。ムダにわたしをちやほやするんだから」 月子先輩の更なる飛躍を願いつつ、電話を切ろうとしたときのこと。 「って、わたしの描いた動画でどうせ、また『公式は病気』とかタグ付けるんでしょ?あー!付けて御覧なさい!うpして御覧なさい!」 「う……。ネタにして貰えるだけ勲章だよ!ちくしょう、こみけっとで二次創作買い漁ってやる!」 リオのメガネに、褐色の立派なウマの姿が目に入ると、暴走していたはずのCPUが落ち着いた。 大きな武道用具のバッグを肩にかけたその姿は、見紛うことは無い。ゆっくりゆっくり近づく彼女の姿は、 まるで戦国の世を走る『武田の騎馬隊』を思い起こさせる雰囲気を放っていた。 「はい。石見先輩もお仕事お疲れさまです!わたし、先輩にどれだけ近づこうかと……。枕を涙で濡らす日もありました!」 「何よ。いきなり?」 電話越しにキャラが急に変わったリオに月子先輩は面くらい、次の一手を忘れてしまう。打とうと思った駒が手元に無いのだ。 と言うか、相手の棋士は駒を将棋板に置くどころか、月子先輩のおでこ目掛けて投げつけてきたのだから驚くのも無理は無い。 どこかのお嬢さま学校の生徒のような口調で返答するリオは、丁寧に両手で携帯電話を持って一礼した。 「わたしも、石見先輩の声を聞いてとても安心していた所です!お姉さま!またいつの日にか、ごきげんよう!」 「ちょ、リオ!今度さ、リオのコス姿が見たいんだけど!きっと、東方のいなば……」 いつの間にかミサコがリオの側に近づくと、リオは何か話したげな月子先輩を無視して電話を閉じた。 シリアスな顔つきでミサコにことの一部始終を伝えたリオは、ミサコだけの先輩に戻る。 「残念なお話だが、石見先輩は急用でお起こしできなくなった」 「さようですか。残念です」 「大人の世界だ。わたしたちにはどうしようも出来ない。折角だから、帰りにクレープでも奢ってあげようね」 クレープと聞いて、ミサコは内面では頬を緩めたが、表向きにはなぎなたを握ったときのように、顔を引き締めていた。 それは、風紀委員としての誇りがミサコを奮起させていたのだが、リオの方は子どものようにあっけらかんとしたものだ。 呑気に長い耳を揺らし、ミサコに見つからないように後ろ手でこっそりとPSPを自分のカバンに仕舞う。 「きょうは日曜日だし、学校は関係ないの。寄り道にはならないと思うよ!」 ミサコは長い脚でリオを追い抜かぬように、歩みの速さを合わせて一緒に校門へ向う姿は、何故かほほえましい。 その間、ミサコの方からリオに話しかけることは無かったが、リオは相変わらず言葉をまくし立てていた。 ミサコが言うには「因幡先輩と一緒にいるだけで安心します」と。リオは「むっはー!」と叫びたいのを我慢して、 溢れ湧き出る感情をぐっと手を握り締めることで、なんとか押しとめた。しかし、冷静さは続かない。 学園の校門にスケッチブックと画材を抱えて伸びをしている、一人のウサギの女性をリオは発見すると急に言葉を詰まらせ始めたからだ。 その姿は何処と無く、リオをそのまま大人にしたような雰囲気を漂わせている。 「つ、月子……。石見先輩ですか!!」 「リオは中等部の頃から変わらないね」 垢抜けない古着に身を包み、程よく使い古されたブーツは、田舎から出てきたばかりの美大生と言う感じでもある。 学園OGがやって来たということもあり、ミサコは改まって深々とお辞儀を月子先輩にしていた。長い髪のキューティクルが美しい。 「やっぱり、かっこいいなあ。うん」 「石見先輩は……どうして、佳望学園にいらっしゃったんですか?」 「実は、美術系の仕事をしていてね。デッサンのモデルが欲しいなあ、って思ってリオに連絡したら。ほら!美術系の仕事って、 肌で感じて、目で養って、腕を磨くべしってね。流行を先取らなきゃって。でも、ミサコさん。いいなあ……。イイヨ、イイヨ」 やたらと『美術系の仕事』を強調する月子先輩に眉を密かに吊り上げるリオは、ミサコに見つからないように月子先輩の脚にバッグをぶつけた。 「本当にお忙しいところ、申し訳ございません!時間を割いてまで、ここまで足を運んで頂いて……。 (何がリテイクで来れないだ。どうせ、ワンセグでお笑い見ながら原画描いてたから、しくじったんだろ) 番場さん、石見先輩からモデルを頼まれることは光栄なことだよ」 「は、はいっ」 校門をなぎなた部の仲間たちが通り過ぎる。ミサコに手を振る紫は、ぱたぱたとバッグを揺らしてミサコに駆け寄る。 その間、月子先輩はリオをこっそりミサコから遠ざけると、リオの両肩を掴んでぐらぐらと揺らしていた。 「ああ!!ミサコたん、いいよ!いいよ!あー!尻尾をもふもふしたいお!!リオの嫁にはもったいない!日曜はスタジオが休みでよかった!」 「何だってー?月子先輩は、ウソばっかりつくんだから!どうせ『いい作品を作るには、ウソが……』って逃げるんでしょ? それに、わたしの嫁はもう決まってますの!って、わたしをどっぷりと同人漬けにした月子先輩は悪人です!」 「あれは、わたしが教室に置きっぱなしにしてた同人をリオが勝手に拾ったからだろ。人のものを」 「わたしが拾わなかったら、月子先輩は学校中から笑われ者で人生オワタ!今だったら『ハム○ター速報』にピックアップされますね。 ちょ……。想像したら噴いた!!『教室の机の上に同人置き忘れたwwwwwwww』ってスレ題ついて」 ミサコが紫と別れると、長い脚でリオと月子先輩の元に駆け寄ってきた。リオと月子先輩は長い耳を天高く伸ばして息を飲む。 お待たせして申し訳ございませんと、大きく一礼をするミサコに月子先輩がお気楽にと手を振って、何でもないことをさりげなくアピール。 「まさに文武両道って感じだね。リオもこんな子が後輩で果報者だ」 「わたしだって、石見先輩みたいな人がいてくれたから、くじけずに風紀委員続けられたんですよ。やだなあ」 さっきまでの会話をミサコに聞かれていたら、末代までどう弁明しようかと不安をよぎらせた二人の間に、まだまだ冷たい冬風が吹きぬけた。 おしまい。
https://w.atwiki.jp/jujin/pages/605.html
橋と空 7 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2009/03/14(土) 00 30 29 ID vBCY9Jdt スレ建て乙でっす。 1乙の台詞シリーズ増えてるー(゚∀゚) 転入生ネタなど。モデルはカラカル。 目の下クマー付き、性悪、口も悪い、クラスに溶け込めそうにない感じの 厨二病よろしくの薄暗いキャラも作ってみようかなーと…
https://w.atwiki.jp/jujin/pages/330.html
スレ3 297-313 FORMAT:4章 「とりあえず、どうする?」 「どうするったって…もう行くアテないんだろ?」 クロンファートでの異常気象。 あれは全てビリアルデの幹部と名乗るウルカという女の仕業だった。 何のためにあんな事をしたのかは定かではないが、何にしろバグに関しての件は結局振り出しに戻ってしまった。 「まぁ、どの道日は暮れちゃったんだ。明日に備えて休もう。」 「…そうね。」 長かったような短かったような。 今日という日は過ぎ去る準備を始めようとしていた。 ひとまず目に留まった大きな木の近くに腰を下ろした。 「今日はさすがに飯抜き…よね。」 シンディは空を見上げながらお腹に手を当てて言う。 「…だな。はぁ…規則正しく三食摂りたい。」 「ワガママ言わないの。…あれ、ソフィは?」 「……あれ、いねぇ。さっきまでいたよな…?」 どうりで随分静かだったわけだ。 ここまでの道のりはずっと一本だったから、はぐれたって事はまずないだろうが…。 「道端で蝶でも見かけたら追いかけていきそうなタイプよね。」 それは言えてる。 「しょうがない。探してくる。シンディはここにいて。」 「いってらー。」 と、俺がよっこらしょと立ち上がる前に 「オーイ!!」 ソフィが手を振りながらこっちに来ているのが見えた。 まったく心配かけさせて。18なんだからもっと自覚というものをだな―― 「そこの林にピピールの巣あったから捕まえたよー美味しいよー。」 袋いっぱいに詰められた赤黒い生き物を差し出す。 前言撤回。 貴女はボクらよりしっかりした救世主たんです。陰口言ってサーセン。 そのピピールという小型の生物は、こんがりと焼くと良い香りを放ち、 とてもやわらかい食感で大変美味な肉だった。 正直今まで食べたどの肉類より美味い。 「ありがとうソフィ。なかなか頼りになるわね。」 「そんなーこれ見つけたのはグーゼンだよーグーゼーン」 ソフィは笑いながら後頭部に手を置く。 「美味しかったけど、ちょっと可哀そうだったかな…。」 「何言ってるのザックスくーん、ピピールは作物を食い散らかす悪い子なんだよー」 「えっそうなの?」 ソフィの話では、ピピールは時期を問わず畑の作物を食い荒らしに来ているらしい。 更にそれだけではなくピピールの歯には植物を枯らせてしまう成分が含まれているため、 ほんの一口でもかじられようものなら、その作物はあっという間にダメになってしまうそうだ。 ピピールはいわゆる『害獣』として、全力で完全駆除に向けて対策を進めているとの事だ。 その対策の一つに『いっそ食べてしまう』という項目があるわけで、 レストランには『ピピールの和風ソース和え』なんてメニューが普通にあるらしい。 それにしてもよく知ってるなこの子は。 さすが狩人。意外と彼女をパーティに入れたのは大正解だったかもしれない。 「んで何だっけ……そうだ、これからどうするか考えてたんだ。」 「あぁ、そうだった。…でもいくら唸っても案なんて出ないわ。」 二人揃って腕を組み考え込んでいると、後片付けを終えたソフィが言った。 「ハイハーイ!迷える子羊サンに朗報有りだヨー!」 「え、もしかしてアテがあるのか?」 ソフィは自分の胸をドンと叩いた。 「二人ともブレッガーって人知ってる?」 「あぁ、ちょっと前にスタークラフトって飛行船の開発に協力した人だろ?」 「私もそれ知ってるー。凄く頭良いんだってね。」 スタークラフトは今までの飛行船の十倍速く、静かな機械音で低燃費。 完全に実用化したら地上での交通手段は廃れてしまうのではないか、とテレビで大々的に放送していた。 そのスタークラフトの推進力・軽量化に貢献したのがグレイ族のクレート・ブレッガー。 若くしてとある科学研究所の長を担っているらしい。 …テレビで見たとは言ったが、これも設定、偽の記憶ってヤツなんだろうか。 はぁ、自分で自分が信じられなくなるなんて。もう堕ちたなこりゃ。 「聞いて驚けぇっ!なんとそのブレッガー君とこのあたし、ソフィ・バーティニーとは大の仲良しなのだー!!」 不覚にもちょっぴり驚いてしまった。 「友達…なのか?」 「そりゃもーマブだよマブ!アカデミーで二個上の先輩だったんだー」 彼女がそんなコネ持ってるなんてとんだ伏兵です。 俺は一体何回驚けばいいんですか。 「あ…もしかして、そのブレッガーに話を聞きにいく…って事か?」 「ピンポンピンポーン!」 「なるほどね…私はそれに賛成。わからない事は物知りに聞けばいいってコトよね。」 確かにそうだ。彼なら何か知っているかもしれない。 確実性はないが、どの道右も左もわからない身だ。 今はワラにでもすがる思いで行動するしかない。 俺達は明日、朝イチでクレート・ブレッガーのいる大都市、アグラヴェインへ向かうことにした。 ――ふむ。今日で家を出てから三日目か。 ぐっすり寝るつもりだったが早朝に起きてしまった。 辺りは微妙に明るくなっている。 ソフィは木の根元でスースー寝てる。 寝顔見てやろうか、と思ったがそれは無理な話だ。 何故なら今回の寝ずの番はシンディなのだから。 ぐっすり眠ってる女に男が近づこうものなら、もれなく彼女の鉄拳が……。 あれ? …シンディが…いない。 あいつ…どこ行ったんだ? また「ゴフジョウ」か? ……なんというか、俺は世話焼きなのかな。 気付いたら目をこすりながら起き上がって、彼女の事探してたよ。 ――! いた…ビックリさせやがって。そんな離れた所でもないじゃないか。 平たい岩の上に座って、太陽が昇ってくる方を見つめている。 朝方の微妙に冷たい風によって、彼女の美しい髪がなびく。 ……あぁ。これはアレか。感傷に浸ってるのか。 ここからではどんな顔をしているのかは分からないが…。 普段あんなにギャーギャー言う人がする行為とは……思えん。 うん、我ながらちょっぴり失礼だったな。 …どっちにしろお邪魔だよな。 その内戻ってくるだろうから、こっそりおいとm 「ザックス…?」 おーのー気づかれた。つーか何で気付いた。チクショー 「何こそこそしてんのよこの豚が」と罵倒されながら空の彼方にぶっ飛ばされている俺の姿が目に浮かぶ。 腹くくれ俺。歯ぁ食いしばれ俺。心の準備は出来たぜ。さぁ来い! …来ない。 ずっと岩に座ったままこっち見てるだけ。 「何やってんのよ。こっち来れば?」 ……その顔は怒るどころか、笑っていた。 「…シンディが物思いに耽るなんて、ちょっと意外だな。」 「失礼ね。私だって悩みの一つや二つあるわよ。」 俺はシンディの真前にあった小さな岩に腰掛ける。 どんな悩みなんだ?と聞いてみるところだと思ったが、生憎俺は口下手だ。 それらしいフォローをしてあげられる自信が全く無い。 だから敢えて聞かなかった。 といっても、聞いたところで教えてくれない可能性もあるわけだが。 しばらくはそんなとりとめのない話が続いた。 「あー……ザックス?」 「ん?」 シンディは突然流れを切った。 その言葉は何ともぎこちない口調だった。 「その…なんていうか……ごめんね」 「…え。ど、どうしたんだよ急に。」 何故か謝られた。ホントにどうしたんだ。 何だか俺、ここ最近ビックリしすぎ。あと何回ビックリすれば気が済むんだ。 「いや、ホラ。ほとんど何も知らないアンタを連れ回してさ、無茶言ったり…してたから、うん。 私一人で…旅してれば良かったよね…。」 ホントにどうしたんだ…予想もしない言葉ばかり飛び交う。 言い終わるとシンディはうつむいていた。 チクショー出やがれ慈悲の神様。俺は何て言えばよろしいんですか。 …しばらくの沈黙の後、俺は口を開いた。 「シンディが突然現れて突飛な事言ってきた時は驚きもしたし、信じられなかったさ。今は違うけど。」 「…………。」 「でもさ、迷惑だとは思ってない。むしろ感謝してる。」 「!」 ここでようやく顔を上げてくれた。 「だってシンディは俺を助けに来てくれたんだろ?わざわざリュネットから。 実際あの時来なかったら、ホントに死んでたかもな。ハハッ。 フォスターだって追っ払ってくれたわけだし。あの時の俺じゃ敵いっこなかったよ。 ……だからさ、別に謝んなくていいよ。今結構楽しいしね。 逆に俺が言わなきゃな…。あの時は言えなかったけど、ありがとう。」 はぁ…はぁ…よくやった俺。自分でもナイスフォロー。ありがとう神様。 まぁ、思いつきではないんだけど…ね。 「……ザックス…私……私は」 「うわああああああ置いてかれたあああああ寝坊してごめんなさあああああああ!!!!」 突然叫び声が、それは紛れも無く一人で寝てたソフィの声だった。 「…やっべ。放置プレイかましてた。」 「…フフ。おしゃべりが過ぎたわ。戻りましょ。」 シンディは俺を軽く小突いて先に行ってしまった。 何か言いかけてたのは気になるけど……これで良かったのかな。 俺も戻るとしよう。ソフィはなだめてあげるのが大変そうだ。 「もー!!ひどいよ!!」 「ごめんごめん。」 半べそかいてた彼女をなだめると、次はやはり怒り出した。 「すごく心配して淋しかったってのに、二人きりでデートなんて!!」 「ちょ、それは違」 「何よーもー!二人で勝手にイチャついてろー!」 ソフィはプリプリしながら先に行ってしまった。 うん、二人で勝手に赤面してる。 よく考えると、あながち間違ってはいないよな。 なんて言ったらシンディに何されるかわかんないから無論黙ってたけど。 誤解を解くのには街に着くまでの時間全てを費やすハメになった。やれやれ。 何というかまぁ、これが都会ってヤツなんだろうか。 アグラヴェインに到着するなり、車輪のない車が多く徘徊し、巨大な電子掲示板がドンと置いてあり。 そこには実際には見たこともないものだらけだった。 そして見渡す限りの人、人、人。 首が痛くなる程高い建物。 嗚呼、我典型的な田舎モン也。 二人を見ると、特に驚いている様子もなく、しれっとしていた。 ソフィはまだ分かるが何故シンディまで…。 俺が非常識なだけなのか。 「ほら何してるのー行くよー」 ボケーッとしている俺を見て、背中をグイグイ押すソフィ。 ぶっちゃけちょっと和んだ。 ブレッガーがいるという研究所は、ずば抜けてでかい点を除けば周りの建物とさして変わらない地味な風貌だった。 まぁ、俺の町エーダインにはこんなの無かったんだけどな。 「着いたのはいいけど、中に入れさせてくれるのか?」 「大丈夫だって。あたしがパスポートだよ」 そうは言うが、仲が良いってだけで入れてもらえるほど世の中は甘くないんだぜ、ソフィさん。 なんて言う暇もなくソフィはさっさと行ってしまった。 「ま、行くだけ行ってみましょ。」 「…そうだな。」 確かにここでモジモジしてても仕方がない。 俺達もソフィに続いて中に進んだ。 「だーかーらー!ブレッガー君は友達なんですってばー!」 「そんな事申されましても……。」 あらら、やっぱりこの展開ですよ。 ソフィがカウンターに身を乗り出して、ロビーの人ともめている。 だからそんなに世の中は甘くないんですよ。 そろそろ勘弁してあげてください、ソフィさん。その人困り果ててますよ。 と、その人は突然後ろを向いてパソコンをカタカタといじる。 おいおい、警備員でも呼ばれるんじゃないか、ヤバいって。 ……だけどそれは違ったようだ。モニターにブレッガー本人の顔が表示される。 《どうした?》 「ソフィと名乗る女の子が、ドクターに会わせろと聞かないんですが……。」 《えっ……》 モニターをチラリと見るなり、ソフィは叫んだ。 「あ!オーイ!!ブレッガーくーん!」 もう、何てデカい声だ。手までブンブン振って。何だか恥ずかしくなってきた。 《…その声…本当にバーティニーか。》 「ほ、本当に知り合いなんですか?」 《あぁ…通してやってくれ。》 「!ですが…ドクターは今」 《分かってる。だが来るなと言っても聞かないからな、そいつは。》 「しかし……。」 《ま、スパイみたいな事するヤツではない。サーモスタットの件は俺が責任を持つ。 5階の休憩室で待っていると伝えてくれ。》 「…了解。」 「どうやら、話はついたみたいね。」 「まったく…ヒヤヒヤしたよ。」 本当にソフィがパスポートとなった。まさかこれほどすんなり入れるとは。 「お待たせしました。5階の休憩室でドクターがお待ちです。」 「イェーイ!さぁ2人とも!行こー!」 しかし彼女の親は、ちゃんと躾というものをやってあげたのだろうか…。 「ひっさしぶりーブレッガーくーん!」 「まったく全然変わらんな、バーティニーは。」 茶髪に黒縁のメガネ、テレビで聞いたあの声。 彼は間違いなくグレイ族のクレート・ブレッガーだ。 そういえば実際のグレイ族そのものに会うのは、彼が初めてかもしれない。 頭が良くて背が低い、という事しか聞いていなかったが、それは本当だったようだ。 彼は俺達より遥かに背が低い。1メートルあるかないかって感じ。 「ん、そっちの2人は?」 ブレッガーは入口で立ち尽くしていた俺とシンディに気付いた。 「…あ、初めまして、ブレッガーさん。シンディです。」 「ザックス・・です。」 「あー、いいよいいよ敬語は。俺そういうのニガテなんだ。あと俺の事はドクターでいい。」 ふむ、思ってたより軽いんだな、このヒトは。 『知の業界』っていうの?そういう所のヤツらは、みんなお堅いんだろうとばかり思っていた。 「ハハ、そりゃ偏見だな。仕事の時以外は、皆が皆こんな感じさ。」 ブレッガーはそう言いながらコーヒーを注ぎ、俺達に差し出した。 「んで、何の用でここに来たんだ?『遊びに来たヨー』ってワケじゃあるまい。」 「……実は」 俺はこれまでの事を簡単に話した。 ハッキリ言って非科学的だ。ハナから信じてもらえる話だとは俺でも思っていない。 ソフィみたいな子ならともかく、相手が博士とあっちゃあなおさらだ。 一通り話し終わると、彼はコーヒーを一気に飲み干した。 「……。」 正直、笑われると思っていた。バカじゃねーのかと、有りえないだろと。 だがその予想は音もなく崩れ去った。 「…そうか。」 「え、信じるのか…?」 「わざわざそんな遠くから嘘をつきにくるとは思えん。」 意外と話が通じるヒトのようだ。心底安心した。 「……大陸レードの消滅事件は知っている。公には発表されていないが。」 「どうして?これは大変な事よ。このランセルが消えないとも限らない。」 「……昨日それに関しての会議に出席した。あちこちの学者や研究員が集まって様々な説を主張してきたが、 さすがに突然跡形もなく消えてしまうような現象は、今までの事例から考えて有りえないし、考えたことも聞いたこともない。 結局その件は謎に包まれ、世間に公表する事を固く禁じてその会議は終わった。」 …なるほど。確かに彼の言い分には納得せざるを得ない。 あれから3日も経つのに、ちっとも知れ渡っていないのはそのせいか。 「それにしてもゲームの世界、か。さすがに想像したこともない。」 「だがそれは――。」 「あぁ、完全に否定はできないな……。そうだと仮定すれば辻褄が合う。」 ここまですんなり受け入れてもらえるとは思わなかったな……。 聞ける事は全て聞いておこう。 「じゃあ魔法も?」 「その件は理論上不可能ではないな。本当に使える者は限られているそうだが。 俺もそれは実際に見たことはある。」 「え、そうなのか?」 こんなそこらの町より何年も先を行く街にいる立派な博士が、魔法を肯定してるなんてなあ。 彼はどこか違う・変わっている、いや、新しい考えを持っている? 「なに、そう難しいものじゃない。今現在考えられているのは、『陰陽五行』ってヤツがあってだな――」 「…ストップ。長くなりそうな話は勘弁してくれ。」 「ム、そりゃ残念。中々興味深いものなんだが。」 知に生けるヒトの興味深い話などたまったもんじゃない。 日が暮れても続くに決まっている。 「じゃあ突然地が割れた、あの亀裂は?」 「そいつは多分『ファンディエ』だろう。自然現象だ。」 マジかよ。あんな危ないものまで自然現象にノミネートされてるのか。 何らかの前兆がある竜巻とかよりよっぽどタチが悪い。 「……これの説明は」 「結構です。」 これも長くなるだろう、絶対。よっぽど話したかったのか、ブレッガーはちょっぴりうつむく。 「えーと、それで本題は何だっけ?」 「とにかく最近変わった事が起こっている場所か何かを知っていたら教えてほしい。何でもいい。」 ブレッガーは顎に手を当て、カラになった紙コップを見つめる。 「…そうだな……。」 換気扇が回る音しか聞こえない、この静寂の時間。 どうにもこの感じは俺にとって苦痛だ。 「ここランセルと隣の国、ローナンとが睨み合っているのは知っているな?」 そういえばシンディがそんなこと言ってたな。 「実はつい最近までは、特に仲が悪かったわけじゃなく、普通に貿易も行なっていた。 ……コトを吹っ掛けてきたのは向こう側からだった。」 「何をしたんだ?」 「輸出入する品物の価値がそっちと釣り合わない、と不満を言ってきた。 こっちにしてみれば言い掛かり以外の何でもない。品物の額そのものは、大きな差が出ないように出しているつもりだったし、 それで向こうも納得していた。誰かに感化されでもしたんじゃないかと思った。」 ……それで険悪な関係になってしまったのか。 そう言われてみれば、フィンで見た市場の品揃えは、はっきり言って良い方ではなかった。 恐らくローナンとの貿易をしていなかったからなのかもしれない。 「じゃ!決まりだね!目指せローナン!」 ソフィはバっと立ち上がり、窓に指を突きつける。 「おいおい、そうは言ってもここからじゃローナンまではかなり遠いぞ?時間が掛かりすぎる。」 「それなら大丈夫だ。」 ブレッガーはネクタイを締めなおしながら言った。 「実は例のスタークラフトの試運転日が今日なんだ。目的地はローナンの工業都市、コルネリ。」 「え?乗ってもいいの?」 「他にも大勢乗るが、定員オーバーには程遠い。お前達3人くらい余裕で乗せられる。 ……それに例えダメだと言っても聞かないヤツが約一名いるからな。」 ソフィの目はキラキラと輝いていた。 あぁ、こうやって彼女は彼を困らせていたんだろうな、今までずっと。 嫌いってワケではなさそうだが、彼はソフィが苦手そうだ。 「運転手には俺から話をつけておく。気にせず乗ってくれ。」 「わかった。恩に着るよ。」 「ワーイ!シンディちゃん!!空だよ空!」 「空か…初めての体験ね。良い思い出になりそうだわ。」 まったく呑気なモンだな。コトは深刻、まだ何が起こるかわかったものじゃないのに……。 やれやれ、まぁせっかく乗せてくれるんだ。どの道それ以外にアテはなさそうだし、 ここはお言葉に甘えて……。 「…ザックス、だったっけ?」 「!」 キャーキャーはしゃぎながら部屋を出る二人の後を追おうとする俺を、ブレッガーは呼び止めた。 「……俺はアクマでも研究者、科学の進歩に貢献していかなければならない身であって、 科学的説明も証拠もない発言をするのは、研究者にとって物笑いされて当然な行為だと思う。 それを踏まえた上での発言だと思って、これから言うある一言を、お前の頭の隅にでも置いておいほしい。」 …突然どうしたんだ?でもそんな言い方されると気になってしまう。 「………何だ?」 「この世界には、神がいる。」 「…どういうことだ?」 「ここがゲームの世界だと仮定して考えた、いくつかの仮説の内の一つでしかない。その『いくつか』の中で最もそれらしい仮説を言った。 証拠もないし科学的説明もできないが根拠はある。」 「……逆にその他の仮説の方が聞きたいね。」 ブレッガーはカラの紙コップを片づけ始めた。 少々間をおいて俺はまた聞いてみる。 「何故そう思った?それに……何故俺にそんなことを?」 一瞬ブレッガーの表情が曇ったような気がした。 「……ゲームなんてのは自然現象なんかで出来るようなものじゃない。100%間違いなく人為的に創られたものだ。 そこから考えたのは、この世界の創造主の存在……故に神、って感じだな。」 確かに世界を創るなんてのは、誰が何人いれば――なんて話では到底納まらない。 そうなるとやはり神がいるのだろうか……。 「後者は……愚問だな。」 「え?」 「俺を誰だと思ってる。ここに来た理由、質問や話の内容、これまでの経験。 これだけ材料が揃っていれば、お前の立ち位置くらい容易に分析できる。」 ……見透かされていた。天才は侮れん。 「間違いなく一番の受難を被るのは、世界の中心であるお前だ。 だがこの先、辛くても逃げ出す行為だけはするな。運命を受け入れろ。」 運命……。 「……分かった。」 「…それだけだ。呼び止めてすまなかった。」 「いや、意味のない話ではないと思うよ。それより試運転って事は今日初めて飛ばすんだろ? 大丈夫なのか?墜落しないだろうな。」 「ッハハハ!そりゃ暴言だな。この俺が設計したんだ。その時は俺もそこの窓から『墜落』してやる。」 「こりゃ失礼。それじゃ、ありがたく乗せてもらうよ。」 「ボン・ヴォヤージュ。」 俺は軽く会釈して部屋を出た。 ボン・ヴォヤージュ、『良い旅を』か。 本当に、良い旅になりゃあ大歓迎なんけどな。 関連:ザックス シンディ ソフィ・バーティニー 3章"4章"5章 FORMATシリーズ:本編に戻る FORMATシリーズ TOPへ戻る
https://w.atwiki.jp/jujin/pages/401.html
ウマさ爆発カレー 769 名前: 通りすがり ◆/zsiCmwdl. [sage] 投稿日: 2008/12/29(月) 13 56 16 ID AOfA7UyZ 757 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2008/12/28(日) 20 21 15 ID ef5zx12k 鉄道研究部を作るため激しい勧誘活動する朱美と ゲーム研究部と騙されて入ってる利里と 当然のように勝手に登録されてる卓 みたいな光景が浮かんだ 以上です。 ≫757の事をアイディアにして少し書いて見た。反省しない。 尚、卓の言う『義母さん』は決して誤字ではありません。 その理由は別の話で……。 774 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2008/12/29(月) 21 30 44 ID rQpplFuk あま噛み同好会のふたりについては名前も含めて御自由に(笑) ≫769] 朱美が凄いなぁ(笑) で、帰省したら大変けしからん物を見つけてしまいました。 北海道の暴走は未だ止まりそうもないです。
https://w.atwiki.jp/jujin/pages/286.html
スレ3 47-81 ひみつの風紀委員長 前編 「そこの男子!窓のさんに腰掛けない!」 「サーセン!」 素っ頓狂な男子の声でわたしへの返事が返ってきた。なのに、彼らは一向にも窓のさんから降りようとはしない。 クラスメイトの不躾な行動は他のクラスに対して失礼極まりない。それを正してゆくのが、風紀委員長であるわたしの役目だ。 とくにここの男子。まるで子供のように、はしゃぎまわり『高等部』の自覚を持つことはまるで無い。 更に追い討ちをかけるように、サン先生までもがその輪に加わるということはわたしとしては非常に遺憾。 こうして、わたしの長い耳を揺らしメガネを光らせながら、生活指導のホイッスルを鳴らす日々が続く。 放課後の職員室、国語科の泊瀬谷先生と一緒に雑用をしていると、モエさんが提出するプリントの束を携えてやって来た。 しかし、モエさんよ。あなたの身なりを見てふと思う。 そのスカート丈は少し短いと思わないか。 自慢気な太腿が眩し過ぎないか。 ケモノの誇りを捨ててはいないか。 わたしのメガネがまたも光る。モエさんに疑問を問いかける。だが返ってきた答えはわたしの予想を上回るものだった。 「だって、このほうがかわいいもん」 「だって、って…。膝上何センチって決まってるか知ってる?」 「わっかりませーん」 「ちょっと!先生!!これっていけないと思いませんかっ!!」 泊瀬谷先生は少し困った顔をして、生徒に注意をすることをまるで申し訳なさそうにしていた。 ここでビシッて言ってもらわなきゃダメなんです!先生! 「リオ、まった明日ー!」 先生が照れ笑いをしている間にモエさん、プリントを泊瀬谷先生のデスクに置くと、短すぎるスカートを翻して帰ってしまった。 「因幡さん…ごめんね」 いいんです、先生。生徒の乱れを食い止められないのは不肖・因幡リオのせいなんですから。 学校の帰り道、いつものように街の書店に寄り道。校舎の中では風紀委員長でも校門を出れば、一羽のウサギの女の子へ戻りたいものなんです。 インクの香りも初々しく、わたしの知的好奇心を刺激すること心躍るではないか。ひくひくと鼻を揺らす。 平積みされた発売されたばかりの雑誌をしげしげと見渡し、「確か、今日だったよね…」と考えながらゆっくり本棚の周りを歩く。 わたしの住むような地方都市では必ず発売日より二、三日遅れて入荷してくるので、少し損した気持ちだ。 わたしより先に内容を知っているヤツがこの世に居るって分かると、多少なりとも悔しいということは分かってもらえるだろうか。 そんな誰も聞いちゃいない愚痴を口にしながら、店内を物色すると…、 「あった!」 思わず小さく声を出す。よしっ!ちゃんと出ている!きちんと書店にお目当ての雑誌が並んでいる事を確認すると、 わたしは今日その雑誌を買わずに家路へ。だって…制服のままじゃ…、恥ずかしいからね。 翌日の放課後、わたしは呑気にお買い物。 ジージャンにかわいい黒のミニスカート。目深に被ったニットの帽子にかくれんぼするように、ウサギ耳が飛び出している。 使い捨てのコンタクトをはめて、今日だけは相棒のメガネもお休みだ。 髪型もいつもの簡単なボブショートからちょっと外跳ねの元気な感じにしてみた。ワックスつけるのにも気合が入ってるんです。 足元も最近買った編み上げブーツで決めてみたのだが、こんなわたしに似合うかな。街いちばんの書店を目指す。 時は夕暮れ、茜色の空がわたしたちを空と同じ色に染めて、秋風はひたすら街を冷やしてゆく。 けっして都会ではないわたしたちの街は一日の疲れを癒すように、明日に備えて休もうとしている。その隙を突いて、わたしは書店へ。 お目当ての雑誌はいつものように本棚に居座っていた。その雑誌と、 気まぐれで買う予定ではなかったファッション雑誌を重ねて持ってお会計へと小走りする。 「今が…チャンス!」 なんたることだ。今日に限って長蛇の列、しかもレジ係は新人の子らしい。だからレジはオロオロとしているばかり。 こうして待っている時間がいちばんむず痒いのに、「もっとテキパキ働きなさい」と余計なお世話を焼いてしまうのは職業病か。 周りの目が全てわたしに注がれているようにも思えてきた。わたしの番になってお会計を済ませる瞬間、 そのレジの子は小銭を落としてしまった。早く帰らせてくれ。 「ただいまあ」 「姉ちゃん!ご飯もう出来てるよ」 中学生になったばかりの弟のマオが、ぴょんと跳ねて玄関のわたしを迎える。マオはわたしに似て女の子みたいな顔をしているが、 それを言うと本気で怒るのでそれはそれで面白い。たまにからかってみるのもご一興。 後で行く、と伝えてわたしの部屋へ一旦引っ込み着替えをする。 わたしの部屋が弟と別になって、もう4年になるだろうか。扉を開くとわたしだけの自由な国。 女王はわたし。不思議の国のウサギは時間に追われているけれど、ここの国のウサギはのんびりしてもいいんです。 パソコンにぬいぐるみ。ポスターに…アニメのDVD。本棚はもちろん、まんがで一杯。 さて、ご飯を食べたら買ってきた雑誌でも読むかな。 いやいや、今週の録画分がDVDレコーダーにたんまりと溜まっている。そろそろ一気に見ないと、ネットで話についてゆけない。 今週はゲストにあのアイドル声優が起用されているから楽しみだな…いや、演出がアイツだから…。 …あれ。…わたし、少しおかしなことを言っていますか?ちょっと、待って欲しい。いやいや、わたしは他の人より ちょっとだけまんがやアニメに詳しく、ちょっとだけかわいい女の子のキャラが好きなだけで…。 ただそれだけの事なのに、あんまり他の人にこの趣味を知られたくないんです。 それもこれも、弟のマオのせいだ。マオが騒ぐからわたしが気を使わなきゃいけないのだ。 頭の回転だけはムダに速く、しょっちゅうわたしを困らせてばっかりいる愚弟のせいだ。 「姉ちゃん!ごはんだよ!」 わたしの耳は長いから、そんなに大声を出さなくても分かってます。帽子を取って、ジージャンを脱いでいると再び弟の声が響く。 「姉ちゃんの、お・た…」 わたしはマオが全て言い切るまでにリビングまで駆けつけ、クソが付く位生意気な弟に跳び蹴りを食らわせた。爽快爽快。 こんなに優しいお姉さん、他にはいませんよ。 夕飯を済ませるとマオはテレビにかぶりつき、そしてわたしは部屋に篭る。扉には「リオのへや・かってにはいるな」の掛札。 こうでもしないと弟が入ってくるし、仮に進入してきても跳び蹴りを食らわせる大義名分もできるってこと。 忙しい風紀委員長としての一日の勤めを終え、家に帰ってこの時間がいちばんホッとする。 バッグから書店の袋を取り出し、インクの香る真新しい雑誌を取り出す。 分厚い雑誌を捲ると、楽しみにしていた『若頭は12才(幼女)』の巻頭カラーが飛び込んできた。 この雑誌ナンバーワンの人気を誇るこの作品。メディアミックスのグッズも溢れ、わたしたちファンを魅了してやまない。 ヒロインである『森三ゆみみ』は、ひょんなことから若頭になってしまう。しかし、その肝っ玉の強さから舎弟には慕われ、 対立する組の者もひれ伏すと言う『幼女系痛快任侠娯楽漫画』なのだ。 そのヒットを受け、アニメ放送も始まったのだが、一部の地上波やネット配信で、 第4話があまりにも過激すぎると、その回の放送・配信を自粛したとの武勇伝をもつ逸話もある。 原作でいちばん好きなエピソードだっただけに、抗議のメールを放送局に送ったほどわたしには、とても思い入れのある作品でもある。 おっと、今日もいい所でずっこけた。うーむ、かわいい。 今クールからアニメも始まり、わたしとしてはこれからの期待大の作品。巻頭カラーがこの人気を物語っている。 では、じっくり読ませていただこう。お邪魔はしないでね…。 ―――今月の内容は大満足。 では早速、ネットで今月の『若頭』について検索するかな。人様のブログを覗くのは楽しい。 最近気付いたことなんだが、わたしの巡回するブログの主はウサギが多いのだ。 やっぱりウサギは放っておくと寂しくって死んでしまうんだろうか。コメントを残しておこう。 うっ、コイツは酷評しやがる。アンチはいるからね…どこの世界にも。 でも、『若頭』はいいなあ。頼もしい若い衆を引き連れて、いざとなったら矢面に立って降りかかる火の粉を蹴散らす頼もしいヤツ。 わたしなんぞクラスのために矢面に立っても、男子には気の抜けた返事を付き返され、女子には上っ面の笑い声で返される。 さしずめ、わたしの舎弟は弟のマオか。憎たらしいけど、頼りになるわたしだけの分身。 するとマオがお菓子を食べながらわたしの部屋の中に入ってきた。 「ここの部屋はどうも耳はキンキンするし、目もチカチカするなあ」 憎たらしい台詞を吐くマオのお菓子をひったくった。 昼間のわたしはいつもの風紀委員長。そしてクラスメイトのよき友として愛嬌を振りまいているのだ。 休み時間は友達と談笑をして青い春を送ってゆく。なにがなんだか。 話題は昨日のドラマの話。友人たちは「キタムラくんカッコいい」やら「それがしキモイ」と言っているが、原作を読んでいたわたしにとっちゃ 「ふざけんな、脚本家め。原作を愚弄しやがって」と言ってやりたい気分なのだ。しかし、こんな所で水を差しちゃいけない。 わたしだって、一応『風紀委員長』と言う、クラスから注目を浴びるみんなの人気者でなくちゃいけない。 ウソも方便。そんなことを言い訳にして、うんうんと相槌を打つ。 「そうね、わたしもキタムラくん大好きだな」 ウソだ、大っ嫌いだ。キタムラとか言う大根役者は。あーあ、疲れる。 クラスのみんなに気を使いながら、なんでもない一日を過ごし電停で帰りの電車を待つ間、空を見上げると、 晴れ晴れとした秋の空。なのに、わたしの考えていることはゆううつなことばかり。 天地全てをもってわたしをうんざりさせているのね。神様なんか死んでしまえよ、糞野郎。 「ゆみみはいいなあ」 今日はそんなことばかり口ずさんでいた。ゆみみは、みんなから尊敬されて、若い衆の為に一生懸命でおまけに愛嬌もあるし、 それにまわりには頼りになる組長さまや舎弟だっている。 それに比べてわたしはみんなに気に入られようとウソばっかり演じて、かつメンドクサガリ屋さんで、 それにまわりには困ったクラスメイトや弟ぐらいしかいないのだ。 「ゆみみになりたいな…」 何言ってるんだ、わたし。なれるわけないじゃん。でも…。 うちに帰ると、弟のマオがそわそわしていた。ただいまを言っても、無愛想な返事だけ。 ただでさえ生意気なのに、それを上回る生意気さでわたしを出迎える。 そんな弟を逆上させるのは、すこぶる痛快だ。 「もしかして…デート?」 「ち、ちがうよ!」 「うそばっかり!鼻がヒクヒクしてるよ」 弟のうそは分かり易い。これはデート確定だ、因みにマオのガールフレンドの顔は未だ見たことが無い。 ここはひとつ、姉として、女の子代表としてアドバイスをしてあげなければ。 「どれどれ…、ここはお姉さんがお見立てしてあげよう」 ところが、ただでさえ生意気なのに、それを上回る生意気さをもっと上塗りの生意気な返事が、わたしの純粋な気持ちを逆撫でる。 「姉ちゃんなんか、2次元の女の子にしか心開けないんでしょ?まったく、同じ学校じゃなくてよかったよ!ブス!!」 ムカつく!鼻でせせら笑い、お姉さんを完璧にバカにしている弟よ。 きみには、愛溢れるお仕置きだ。耳を引っ張ってやれ、自慢の耳なんかもっと長くなってしまえ。 そして、ガールフレンドに笑われて振られてしまえ。バーカ。 マオの快い悲鳴の中、玄関のチャイムが鳴る。こんな楽しい時にお客さんですか。 「いてて!来たんだよ、放してよ!」 わたしに耳を掴まれながら、マオは玄関に走る。そこでわたしは勝手に「どうぞ」と返事。 開かれた扉から現れたのは…ネコの少女だった。 …似てる。あの子に似ている。 あの子って誰?そう。『若頭は12才(幼女)』のヒロイン『森三ゆみみ』そのもの…。 「はじめまして」 その『はじめまして』が『はじめまして』じゃない気がする。 もちろん嘘っぱちなんだが、わたしにとっちゃ毎月会っている気がするのだ。 「マオくんのお姉さんですね…。同じクラスの美作更紗です」 ふと、邪な考えがわたしによぎる。 この子を『森三ゆみみ』にしてしまえ。 わたしはウサギ、ネコである森三ゆみみになんかになれっこない。でも、彼女にはそんな素質が仄かににおう。 腰まで伸びた長い金色の髪、冷たいようでコケティッシュなルックス、アニメから飛び出したような声。 そして決定的なのは、廊下を歩いていた時に何も無い所でずっこけていたこと。 活きのいい、天然もののドジっ子だ。羨ましい、羨ましすぎる。こんな子を連れてきたマオに感謝、でかした!わが弟よ。 しかし、乗り越えることさえ困難な問題点がひとつ。 その問題とは、わたしの趣味がこの子にばれてしまうこと。わたしの趣味がばれたら間違いなく、バカにされてしまうだろう。 こんなにかわいい子だ、クラスでも人気者に違いない。まったくヤツとは何処で知り合ったんだか。 「え、えっと。更紗ちゃんはマオと何処で知り合ったのかな…?」 「マオくんとは、塾で一緒のクラスなんです。おねえさんのことはよく聞いてます」 なんだと。マオのやつ、余計なことを言ってなければいいが。 自室に引っ込んだマオと更紗は、隣のマオの部屋では楽しそうに会話をしている。 一方、わたしはネット動画でわたしの地域で放送されていない今クールのアニメを鑑賞中。 もちろんヘッドフォンは必須、こんな音声マオどころか更紗に聞かれちゃ一生の不覚。 時々、隣が気になり音声を緩めて長い耳で潜めてみる。わたしがウサギでよかったよ、こういうのは得意中の得意。 よくよく聞いてみると、内容がまったく無いどうでもいいお話ばかりなのだが、マオにとっちゃ仕合せな時間なのだろう。 扉の音がする。お客さん、もとい更紗が廊下に出たのか、ご不浄にでも行ったのだろう。 しばらくすると、いきなりわたしの部屋の扉が開く。マオか?いや、ノックをすることを義務付けているので違うか? 予想だにしていない出来事だったので、ブンと振り向いてしまう。 「誰!?」 「ご、ごめんなさい!!」 入って来たのは更紗だった。急いで追い返そうと立ち上がると、その弾みでヘッドフォンのプラグがはずれ、 アニメのエンディングの電波ソングが、部屋中に溢れかえってしまった。 更紗もわたしも固まる。もうだめ…人生終了。こんなわたしは、生きていてもいいのですか…。 後編へ 関連:サン先生 泊瀬谷先生 モエ ケモノ学校シリーズ SSへ戻る ケモノ学校シリーズ TOPへ戻る
https://w.atwiki.jp/jujin/pages/676.html
ヒカルと裕 難解シリーズ分離の辺り、記憶がおぼろげになっておりました。 とりあえず虎 兄弟はケモ学でもパラで居るということで御容赦を。 と言うことで、まだうぷできたので置いてみましたが、いつまで持ちますか(笑)?
https://w.atwiki.jp/jujin/pages/1101.html
Back to the sky 美しい青空が広がる、まさに絶好の天気だった。風は緩やかな向かい風、 遠くで木々の葉が揺れるのが鮮明に見える。誰かの合図で走り出し、空へ舞い上がった。 みるみる小さくなる地上。風を受けて更に昇っていく。 突然、右側から衝撃音。バランスを失い、落下していく。そして暗転。 「うわぁっ!!」 跳ね起きてみると、いつものベッドの上だった。窓の外で、街灯がぼんやりと光っているのが カーテン越しに見える。どうやら、まだ夜が明けるまで時間がありそうだった。 右の翼が痺れている。事故の後遺症なのか、体の下になって血行が妨げられたせいなのかは分からなかった。 心臓の鼓動は速く、喉が渇いていた。台所へ行って冷たい水を飲み、気分を落ち着かせた。 ベッドの縁に腰掛け、大きなため息をひとつ。 このまま眠るのは怖い。嫌な夢はもう見たくなかった。 このまま起きているのも嫌だ。やる事がなければ、どうしてもあの事故の事を思い出してしまう。 どちらも怖かったが、結局は眠気が勝って布団に戻った。 ハヤブサ人の中島眞真(なかじま まさし)は事故に遭い、長期の入院とリハビリを経て学校生活に復帰した。 しかし、数年前には滑空垂直降下の中学生記録を打ち立てた彼が、もはや飛ぶことはできない。 事故は翼の腱を切断し、彼を空から絶対的に切り離してしまったのだ。 彼に希望の光を見出させたのは、同級生の風間だった。 飛行機同好会という非公式のクラブ活動があるという事を知った中島は、その部室まで足を運んだ。 そこを訪ねたのは何か目的があるからではなかった。 理由の一つには、新聞部の烏丸に紹介されたから、というのもある。その勧めに従わないのも嫌だったから。 でも、ひょっとしたら、少しでも空を飛ぶという行為の近くにいたかったのかもしれない。 ―― そこには失ったものがあった。少なくともそれに近いものが。 忘れるはずはない。風を切る感覚、急降下から引き起こして一気に減速するスリル、 そして、飛ぶ者の全身を包み込む、ひとつとして同じものがない大空の色。 圧倒的な感覚が押し寄せて、何も考えたくない。 もう少し風間と話がしてみたかったが、その場から立ち去らずには居られなかった。 もちろん、勝手に押しかけて勝手に帰ったことに引け目は感じていた。 だが、それ以外にどうしようもなかったのだ。 最初に飛行機同好会を訪れてから数日後、中島は風間に呼び出された。 放課後の中庭には人影がなく、校舎の向こうからは部活動の声が聞こえてくる。 学校の中で、ここだけが切り離されたみたいだ。 松葉杖に体重を預けながら中島が考えていると、後ろから頭をかすめて、何か白いものが飛んできた。 驚いたが、彼は慌てなかった。 瞬時の判断を冷静に行えなければ、空のスポーツでは生き残っていけないのだ。 幼い頃から培ってきた条件反射は、たとえ飛べなくなっても簡単に消えるものではない。 飛んできたものは軽い音を立てて、植え込みの手前に滑り込んだ。 中島が植え込みに近寄り、中庭に松葉杖の冷たい音が響く。 飛んできたものを拾い上げてみると、それは変わった形をした飛行機の模型だった。 胴体の代わりなのか、下には鳥人の人形がぶら下がっている。 飛行機の部分は軽い素材を削りだしたようで、なかなか精巧に作られていた。 だが人形の形はともかく、描かれた顔はちょっと上手とはいえない。 「もう少し驚くかと思ったんだけどな」 飛行機の模型を見ていると突然、声をかけられた。 振り返ってみると、声の主は風間だった。風間は続けて言う。 「2日ほど考えたんだが、基本配置はそんな感じで進めたい。何か意見があれば今のうちに頼む」 風間が何を言っているのか、しばらく理解できなかった。ふと、手の中の飛行機を見つめた。 数秒の後、中島の心は揺れ動き始め、その声にも動揺が現れる。 「部室にあった、あれに乗るんじゃ……」 「ブルースカイは俺みたいに『空を飛べない』奴のための機体だ。お前にはお前に向いた機体を作るさ」 「僕は、空を飛びたかっただけで……そんな、僕のための飛行機を作るなんて……」 「中島?もう一度、『空を翔びたい』んだろう?俺みたいに『自分の飛行機を作る』んじゃなくて」 風間のその一言で決心がついた。 止まっていた時計が動き出したような感覚。もう一度、風を切って空を駆ける事ができるかもしれない。 冷え切っていた心のエンジンに、新しい火が点ったような気がした。 ―― 再び口を開いた彼の目には強い意志が宿り、その口ぶりも確信に満ちていた。 「……頑丈な脚が欲しいな。少し荒い着地になるかもしれないから」 ――※――――※――――※――――※――――※―― それから2ヶ月と少し。中島の姿が河川敷にあった。その背中には、大きな機械の翼が背負われている。 これから中島専用機、「疾風(はやて)」の初飛行を行うのだ。 それはダクテッドファン2基を持つ、総重量210kgの全翼機。風間が寝食を忘れて設計と製作に没頭した結果、 「疾風」の機体は夏休み期間中に完成したのだった。そしてバッテリーやモーターといった動力部品が 組み付けられた今、「疾風」は数度の地上テストを経て初飛行の日を迎えたのだった。 風間が飛行前の機体チェックを終え、中島に話しかける。 「いよいよだな。何度も言うが、生身の時よりも翼面積が大きいんだ。縦の安定に気をつけろよ」 「ああ、分かってるよ。慎重に飛ぶさ」 「間に合わせのモーターだから効率が悪いのを忘れるなよ」 「15分以内に戻れば安全、だったね」 「もう半年以上も飛んでないんだからな。過信は禁物だぞ」 「ああ。何かあったらすぐに戻るよ」 離陸滑走用の台車に乗り込む。 離陸姿勢をとると、台車から生えている支柱が着陸脚の根元部分にフィットした。 台車の前にはゴム索が伸びている。集められた運動部員たちが、風間の指示でゴム索を引き始めた。 後ろはケーブルで固定されていて、そのロックを外せばカタパルトのように急加速できる。 大出力モーターが間に合わず、滑走距離を河川敷の直線部分に収めるための手段だ。 ゴム索を持った運動部員たちが座り込み、風間が発進地点に戻ってきた。 かくして飛び立つ仕掛けは整った。 深呼吸。 フラップを下げ、着陸脚の横木を掴んだ。 モーター始動。 次第に甲高い音が大きくなっていく。 後ろを振り返ってみると、風間がこちらに視線を送っている。 それに応えて、小さく頷いた。そしてまっすぐ前を向いた。 「発進!」 風間がプロペラ音に負けないように叫び、合図の腕を振り下ろす。 そして飛行機同好会の虎宮山が、機体を押さえていたケーブルのロックを解除した。 軽い衝撃の直後、急加速。出力全開。 顔に風が当たる。久しぶりの感覚だ。 充分に速度が出たところで、尾羽を少し動かしてやる。 浮いた。 勢い良く昇っていく。 ゴム索による加速のおかげで、一気に高度を取ることができた。 もう同じ高さには何もない。川沿いの道が、街並みが、自分の下を流れていく。 再び、空に帰ってきたのだ。 嬉しかった。全身が高揚感に満たされ、精神が研ぎ澄まされたような感覚に包まれる。 モーターの出力が足りないせいだろう、フラップを下げていてもなかなか上昇しない。 出力全開で、ゆっくりと高度を上げていく。このままでは空気抵抗が大きいから、速度も遅い。 それでも高度は500mくらいまで取ることができた。 速度が欲しい。ここまで昇れば急降下しても大丈夫だろう。思い切ってフラップを上げた。 次の瞬間、世界が回った。 一瞬、何が起こったか理解できなかった。そして、前転した事に気がついた。 どうやらフラップを上げたことでバランスが崩れたらしい。尾羽でバランスを取ったはずだが、 尾羽の動かし方が遅かったのか不十分だったのか…… とにかく回転を抑える。尾羽とフラップ、左右のモーターも総動員して体勢を立て直した。 引き起こしすぎて上を向き、そこからどうにか前に向き直って、ようやく姿勢が安定した。 だが気付いた。前進速度が遅すぎる。さっきの引き起こしで失速したのだ! あるいは生身の時の癖が出て、ホバリングしようと迎え角を大きくしすぎたのかもしれない。 モーターからは嫌な音が聞こえてくる。プロペラが過回転してモーターに大きな負荷が掛かったのだろうか。 このままでは河川敷に戻る前に不時着だ。無理に進入すれば立ち木や建物に引っかかる。 急いで周りを探す。開けた場所は……あった!公園だ。ほとんど目の前だ。高度はどんどん下がっていく。 迷っている暇はなかった。思い切り、緊急用の紐を引っ張る。 翼中央のパネルが開き、機体が震える。そして勢いよくパラシュートが飛び出す音。 強く体を上に引っ張られ、落下が止まった。 地面からの高度は30mくらいだろうか……危なかった。着陸脚を伸ばし、着地の衝撃に備える。 思ったより大きな音はしなかった。金属音に続いて、役目を終えたパラシュートが地面に身を横たえる音。 ……運が良かった。心の底から、そう思った。 地上に降りると、ほっとした。何も考えないで済む安心感。と同時にどこか悔しい気分でもある。 空から、誰かが降りてきた。ぼんやりと、それを見つめていた…… 鳶人の警官が飛んできて、機体の横に降り立った。警官は警察手帳を見せ、口を開く。 確かに、これは事故だった。中島は最悪の事態も覚悟した。 「ちょっと危なかったな、怪我はないだろうね?」 「ええ、大丈夫です」 その警官は制服のポケットから手帳を取り出し、何かを調べていた。 「ええと、届出のあった『佳望学園飛行機同好会』の機体というのは、君の背中にある奴かな?」 「はい、そうです」 「……なるほど、ずいぶん野心的な機体のようだ。ところで、君は鳥人だが……」 中島は事情を説明した。 「そうか……いや、すまない。つまらない事を尋ねてしまったな」 「という訳で、この事故は僕の操縦ミスで起こったものなんです。なので設計がどうのこうのという訳では……」 「ん?誰が事故だなんて言ったかな?子供が自転車で転んだくらいじゃ事故のうちには入らないよ」 中島は意表を突かれた。そして驚いた顔で、相手の顔を見上げた。警官は悪戯っぽい笑みを浮かべている。 その表情には子を見守る親のような、ある種の優しさと頼もしさが感じられた。そして警官は真顔に戻り、 「まあ、今後は充分に気をつけて飛ばすように。君一人の体じゃないんだからね」 「はい、すいませんでした」 「謝らなくてもいいよ。もう一度、いや、前よりも自由に飛べる日が来るさ。頑張れよ!」 そう言い残して警官は飛び去っていった。 その直後、息を切らせた風間が自転車で駆けつける。 「中島、大丈夫か?!」 「ごめん、少し調子に乗りすぎたみたいだね。とりあえず怪我はしていないよ」 「今飛んでいった警察は、大丈夫だったのか?」 「ああ。少し話を聞かれて、今後は注意するように、ってさ」 「それなら良かったけど……それにしてもパラシュート付けておいて正解だったな」 「操縦に慣れるまでは必須だろうね。で、機体はどうやって運ぼうか」 「ああ、それならもうすぐ鈴鹿さんが来るから……」 その後、部員全員で機体を分解し、リヤカーに載せて部室小屋まで運んだ。 機体を風間が調べた結果、モーターが過熱して故障していた事が判明する。 出力不足のモーターに無理をさせたのが原因のひとつだった。 ――※――――※――――※――――※――――※―― 秋も深まり、生徒たちが集まるグラウンド。 佳望学園祭の開幕を告げるアナウンス。生徒たちの歓声が上がる中、放送は切られなかった。 ごそごそ、ぼすん。と、マイクを交代する音に続いて、澄んだ声が響く。 その声に従って上空を見上げる生徒たち。すると上空に、ふたつの矢印のような影が現れた。 白頭と「疾風II」による空中演舞の幕開けである。 煙花火を使って航跡を描き出すという演出は、中島のアイデアだった。 虎宮山のアナウンスに乗って、ふたつの白い線が、秋晴れの青い空にくっきりと浮かび上がる。 中島の操る「疾風II」の飛行には、かつての頼りなさを感じさせない安定感があった。 「疾風II」の描き出す力強い航跡と、白頭の描く軽やかな曲線。 その絡み合いはまるで、青空をキャンバスに大きく描かれたスケッチ。演技時間はおよそ20分。 その時間が終わると魔法が解けたように、グラウンドにざわめきが戻ってきたのだった。 飛行機同好会によるデモ飛行は、2部構成だ。 学園祭の開幕と常時に、白頭と「疾風II」の空中演舞。 続いてブルースカイシリーズ最新型による体験搭乗ができる限り行われる。 体験搭乗の主役はもちろん、パワーアップにより搭載量を大幅に増した「ブルースカイXI」だ。 体験開始前のデモンストレーションでは、虎宮山を乗せても安定して飛行可能という、 ある意味破格の搭載能力を見せ付けた。 また、白頭と中島の鳥人ふたりが体験搭乗の宣伝を行うという視覚効果の高さもあってか、 体験飛行の予約はあっという間に埋まり、操縦者の風間を喜ばせつつも疲れさせたのだった。 夢のような時間は、あっという間に流れ去る。 模擬店の食べ物の匂い、いつもにも増して楽しげな生徒たちの声。そういったものを吸い込んで、 いつしか空は赤く色づき始めていた。 夕刻迫る空をバックに、大きさの異なる3つの影が現れた。 幾人かの生徒はそれに気が付き、グラウンドから、教室の窓から、学校前の坂道から、再び空を見上げた。 横一列に並んでいる、白頭の小さな影、「ブルースカイXI」の大きな影、「疾風II」の少し大きい影。 一番小さい影を内側に、ゆっくりと旋回する。一回、二回、三回…… そして彼らは大きく翼を振り、もと来た空へ向かって遠ざかっていった。 まるで空を飛ぶ喜びを噛み締めるように、飛ぶ者のすべてを包み込む、無限の色を持つ大空に向かって。